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資料集

船の保険

図.保険のイメージ

1.プレジャーボートに関する保険にはどんなものがあるか。

プレジャーボートの保険には民間損害保険会社が発売している「ヨット・モーターボート総合保険」(以下「YM保険」といいます。)と漁船保険組合が発売している「PB責任保険」があります。これらの保険の対象となるボートは次の通りです。

これらの保険の対象となるボートは次の通りです。

  1. 1.YM保険
  2.  イ.帆走ヨット(総トン数の如何を問いません)
  3.  ロ.総トン数20トン未満の非営業用モーターボート
  4.  ハ.総トン数5トン未満の船舶
  5.  ニ.総トン数20トン以上で長さが24メートル未満のモーターボート
     (但し、一人で操船を行なう構造で、スポーツ・レクレーションのみに用いられるもの)
  1. 2.PB責任保険
  2.  イ.20トン未満のレジャー艇(プレジャーモーターボート)
  3.  ロ.5トン未満の営業艇(遊漁船、旅客船、瀬渡し船、交通船、遊覧船)

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2.YM保険・PB責任保険はどのようなときに補償されるか

YM保険の補償内容は、賠償責任保険・船体保険・搭乗者傷害保険・捜索救助費用保険の4種類に分かれますが、ベースとなるのは賠償責任保険と船体保険で、契約上そのどちらか一方又は両方を必ず付保しなくてはなりません。搭乗者傷害保険及び捜索救助費用保険はそれらの保険に加えて補償される仕組みとなっています。

PB責任保険は、賠償責任保険と捜索救助費用保険(人命・船体)のみが補償対象となっており、一見YM保険より補償内容が狭いように思われますが、漁船保険組合と提携している民間の損保会社が上乗せ保険として責任保険ワイド・船体保険・搭乗者傷害保険・乗客賠償責任保険(5トン未満の営業艇)を準備しています(「PB総合保険」といいます。)ので、双方を合わせればYM保険より若干広い内容になっています。

では、個別に各保険の内容を見ていきましょう。

先ず賠償責任保険ですが、この保険は「他人を死傷させたり他人の財物を破損したために負担する法律上の賠償責任」によって被る損害に対して保険金が支払われます。他船と衝突したり、洋上に張りめぐらされている定置網や生け簀などに誤って突入すると、きわめて多額の賠償金を請求される惧れもありますので、ボートオーナーは賠償責任保険には必ず加入するようにしましょう。

近年新規にオープンした大型マリーナの多くは、賠償責任保険の付保を艇保管の条件としているところが増えてきて、"賠償責任保険はボートオーナーの常識"となりつつありますが、望まれる傾向であり関係者からも高い評価が得られています。

次いで船体保険を見ていきます。この保険は沈没・衝突・座礁・火災・盗難などの偶然な事故によって自艇の船体に生じた損害に対して保険金を支払う・・・となっています。一見何でも補償してくれるように思われますが、後の「補償されない事故」の項で詳細説明する通り、日常良く起きる軽微な故障損害は対象になっていないということを理解しておく必要があります。

その次に「捜索救助費用」について補償内容の問題点を取り上げます。

YM保険における捜索救助費用とは、"沈没した艇から投出されたり艇から落水した人"を捜索したり救助したりする費用のことを意味していますが、"捜索救助"というネーミングだけから判断して艇の救助も対象となると思い込んでいる人が多いようです。この辺を意識してPB責任保険では、人命捜索救助費用の他に船体捜索救助費用も補償するようになっています。

しかし、この保険も次項で説明する"補償されない事故"に該当する項目が多く、軽微な故障損害についてはYM保険とそれほど大きな差はありません。

最後に搭乗者傷害保険について触れておきます。

この保険は搭乗者が死傷した場合にあらかじめ合意した金額の保険金額が支払われるものです。保険料は、1名の保険金額と1事故の保険金額の組合せにより決められます。

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3.補償されない事故

これが一番分かり難く、そして又一番大切な問題です。

自然災害や酒酔い運転などが免責になるのはどの保険条項にも共通ですが、その他の人為的事故については、"どの保険で何が補償され・何が免責されるのか"が極めて複雑ですので正確に理解しておく必要があります。詳しくは後述しますが、故障はもともと補償の対象ではありません。

総論としていえることは、損害保険というのは本来"①外来・②偶然・③急激に発生する事故を補償の対象とする"という原則で成り立っているという点です。ですから、自動車保険の場合でも、エンジンの焼付きやバッテリー消耗、ブレーキの故障などの事故は、この原則から外れますから保険の対象にはなりません。同じように、プレジャーボートの船体保険でもエンジンの焼付き・故障損害・欠陥・磨耗・腐食さび等の自然消耗などによる修繕費は補償の対象とはなりません。

では、自動車保険もプレジャーボート保険も同じ原理原則から成り立っているのに、自動車保険の場合は当然と思われ、プレジャーボートの場合はおかしいと思われるのは何故なのでしょう。

それは事故の発生する場所が陸上か海上かの違いから来るのです。自動車が故障してもその場に置いたまま車から離れることができますが、プレジャ-ボートの場合は洋上で漂流している艇をそのまま放置したままにすることは即生命の危険に晒されるという、自動車保険には無い問題が発生するからです。

プレジャーボート愛好者は、日常それほど頻繁にボートに乗らないのでどうしてもエンジンの整備が不十分になりがちなせいか、洋上で立ち往生するケ-スが多いようです。そのような場合、船体を安全な場所まで曳航してもらいたいのが、多くのボートオーナーの願いでしょう。

そういう場合に備えて「捜索救助費用保険」がと思い込んでいる人が多いと思いますが約款をよく読むと、YM保険では"搭乗者が遭難した場合・・"と明記されていて、人命の捜索・救助に要した費用のみが補償の対象となっていることがわかります。では、PB責任保険の「船体捜索救助費用」の場合どうかというと、"プレジャーボートの事故により、自艇が他の船舶に捜索または救助され、その費用を負担する場合・・・"と規定されていて、船体そのものの救助費用が補償の対象になっていますが、肝心なのはその後の免責規定です。

規定には"人命及び船体の捜索救助費用のうち、燃料・オイル切れ、バッテリーの不調、燃料コックの開け忘れ、船底プラグの閉め忘れなど、軽微な機関故障や不適切な操船"による場合は「保険金は支払できない」と明記されています。

最後に搭乗者傷害保険についてですが、この保険は、"搭乗中"に限定されていますので、例えばマリーナなどで艇から離れた場所で怪我をしたような場合は補償の対象にならないという点を理解しておく必要があります。

以上損保及び漁船保険組合が発売する各種保険の主要かつ共通な免責事由について説明してきましたが、現在損害保険は競争原理の元に保険の種類毎に各々独自の規定が定められておりますので(例えばドライブユニットに生じた損害や風水害・エンジン盗難危険などは、全く補償しない保険もあるし、特約で補償する保険もあります。)、加入に際しては保険会社・代理店とよく相談し、"補償内容をよく見てプレジャーボート保険に入る"ようにしましょう。

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4.保険に加入しようと思ったら

プレジャーボートの保険はかなり特殊であり、近年一般の損害保険会社の支店・支社や代理店では対応しないところもあるようですので、代理店業務を兼業しているマリーナやボート販売店に相談することも分かりやすい一つの方策です。

また、海上保安庁の外郭団体である(公社)関東小型船安全協会では、"小安協ヨットモーターボート総合保険"(YM保険がベース)の募集を小安協会員向けに行なっています。団体割引のほかに無線機設置割引などもありますので、小安協に入会してこの保険に加入されるのも一案です。

最後にまとめますと、船体保険については最悪でも財産減失が限度ですので、保険に加入するか否かはボートオーナーご自身の判断の問題であろうかと思いますが、如何なるボートオーナーであっても他人に大きな迷惑を与える可能性が大きいことを鑑みますと、「賠償責任保険」と「捜索救助費用保険」への加入はボートオーナーのマナーとして必要不可欠な要件であると思います。

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